おうちから劇場へ!(舞台配信の取り留めもない感想たち)

去年から配信で観劇する機会は多くあったのだけど、この5月末から1ヶ月は毎週のように見ている。しかし最近Twitterでのアウトプットが全くできなくなってしまっているので、ブログで備忘録としてまとめておきます。

知らない頃には戻れない『スリル・ミー』

彼を求めた「私」とスリルを求めた「彼」が34年前に起こした事件を「私」の視点で回想する、演者二人・ピアノ一台のミニマルな空間で演じるサスペンスミュージカル。2018年以来二度目となる成河×福士ペアと、9年ぶり五度目の田代×新納ペアを見ました。今思うと松岡×山崎ペアも買っときゃよかったぜちくしょー!
 
スリル・ミーのことは以前から噂を聞いていたし、見てみたいと思いつつチケット即完で諦めていたところ、オンライン配信があるというので買ってみたんですよ。そしたらもうスパーンとやられたよね、スリル・ミーと田代万里生さんに。気付いたらライブ音源CD2枚と万里生さんのアルバム1枚買ってるし、9月の『ジャック・ザ・リッパー』のチケット買ってるし、7月の中川さんとのイベントも12月の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』のチケットも買おうとしてるよね……。まあ一旦万里生さんの話は置いておいて、スリル・ミーに戻ります。
 
あらすじしか知らずに見たので支配—被支配のアンバランスさと執着の熱量に驚き、事件へと近づいていくことに怯え、物語の終着地点でひっくり返るという…。「私」と「彼」に対して一切の同情はないけれど、演者によってアプローチもキャラクターも全く別物になる「芝居」としてめちゃくちゃ面白い。これは配信で贅沢に見比べられたからこその感想だよなあ。これまで劇場で見比べてきた人たちが羨ましい…!
 
まず成河×福士ペアはまー、成河さんが怖かったね!53歳の歌い出しにひっくり返り、19歳の嬉しそうな声にまたひっくり返った。ずっと目が据わってて観客は怯えているのに福士彼だけが気付いていない。なんでよ!絶対ヤベー奴じゃん!と思いながらもこの鈍感さがないと私とやりあえないんだな…と納得もした。このペアはこの二人じゃないとできないよね…。
 
一方田代×新納ペアは始まって5分もしないうちに私の目からポロポロ涙が溢れてきて「嘘でしょ?」って声が出ちゃった。もう遠い過去の話として生気を失った顔で歌う成河私と、かさぶたを無理やり剥がされたみたいにまだ傷が残っている田代私にこんなに違うものか!と驚き、グッと引き込まれた。あと田代私はめーっちゃかわいかったし、新納彼はめーっちゃかっこいい。好きです。万里生さん、邪悪すぎるかわいさ。それとお互いが愛し合っていることを感じ取れて、そこが魅力的だけどとても危ういとも思った。実在の事件や被害者のことを考えると同情なんかできないのに、でもどうにかできたかもしれない、他の道を選べたのではないか?と私に共鳴してしまう危うさがある。あと歌もこのペアが一番好き。
 
しかしスリル・ミーは感想書くのが難しい(言葉に…するのは…むずか〜し〜い〜〜〜♪)面白かったしか言えなくなるので、見た人と話したいです。 
 

涼真、ホリプロの柱になれ『17 AGAIN』

youtu.be

ザック・エフロン主演同名映画のミュージカル化した、世界初演の作品。失業し家族からも見放された35歳のマイクが、ひょんなことで人生で一番輝いていた17歳の姿に戻り、全てをやり直そうとする物語。
 
う〜〜〜ん、2009年当時の35歳なので全体的に価値観が古い…。ネッドの校長先生への迫り方もキツイし、マイクの家族に対する考え方が家父長制丸出しで、父と息子の関係は良いのだけど娘に対してはキツかった。映画を見てないけど2021年に初めてミュージカル化するのであればもっとアップデートして欲しかったな。あとオタクの解像度が粗くない?だいぶDDなオタクが出てきて笑っちゃった。
 
主演の竹内涼真は最初「全然声出てないじゃん…?」と思ったけどガンガンバスケし始めたのでそりゃあ出ないわ!と驚いた。みんなバスケの王子様なの?普通にパス回ししているのでこっちがヒヤヒヤしたわ。バスケ後は歌声も安定していたし、みんなが好きになってしまうかっこよくて優しいスター選手の姿が彼のチャームに重なって、ハマり役だったと思う。ほとんどのシーン出ずっぱりで(正直今マイクいる?というシーンもあった)歌ったり踊ったりバスケしたりで大変なのもこなしていて偉いなあ。他のミュージカル作品でも見てみたい。
 
涼真以外もミュージカルが初めてというキャストも多かったので、歌は不安定なところもあったけど回を重ねていくごとに良くなっていくんじゃないかなあと期待。パートナー・スカーレット役のソニン先輩の歌はさすがでしたわ。なんか喋り方が海外ドラマの吹き替えみたいでかわいいよね。
 

私のフェミニズムと喧嘩する『夏祭浪花鑑』

ある喧嘩が理由で投獄されていた団七九郎兵衛が、釈放に協力してくれた恩人・玉島兵太夫のドラ息子・磯之丞と恋人の琴浦の仲を裂こうとする奴をやっつけたり頑張るのに、義父・義平次が金に目が眩んで…という義理人情話なのだけど、男が立たないとか女が立たないとかうるせ〜〜〜!!と喧嘩しながら見た。役者たちはバッチリかっこいいし、見得も決まりに決まりまくって素敵だけど、なかなか見ていてキツイものがある。あとかっこよく見せるシーン以外の問答がやたら長くてくどく感じるので、これは演出家と合わないのでしょう…。しかし役者たちは本当にかっこいいんだよ!特に勘九郎さんは浮世絵から出てきたみたいに色っぽくて、哀れで、かっこよかった…。亀蔵のおじさまの立回りも素敵。
 
ちなみに一番テンションが上がったのはサプライズで登場した勘太郎ちゃんと勘九郎さんの立回り!連獅子見た時も思ったけど体幹がしっかりしてて重心が低くて本当にかっこよかった!
 
あとお梶が徳兵衛に迫られる時のシーンの七之助の声がえっちすぎてびっくりした。あんなのお昼から聴くもんじゃないですよ。ドキドキするのでやめてください!
 

ラドゥー大佐落ち着いてください!『マタ・ハリ

第一次世界対戦下、世界中にファンを持つダンサーのマタ・ハリ、自由に国境を越えて活動する彼女にスパイとして働くことを持ちかけるラドゥー大佐、マタの孤独に共鳴して惹かれ合う運命の人・アルマンの三人を軸に、マタ・ハリの悲劇的な半生を描くミュージカル。Wキャストはマタ・ハリ愛希れいか・ラドゥー田代万里生・アルマン東啓介で見ました。
 
まず愛希れいかさんのことを知れてよかった!「ちゃぴちゃん」の愛称で惜しまれながらも宝塚を退団されたことしか知らなかったけど、パワフルな歌声とキュッと口角の上がった笑顔が魅力的で、とにかくかわいい。彼女のマタ・ハリは溌剌とした自立した女性で、思い通りにならない“生意気さ”がより一層周囲を魅了していくことに説得力がある。んだけど!キャラクターが魅力的だからこそ脚本の凡庸さが悪目立ちしてましたね…。彼女のキャラクターと「自由になりたい」という思いにフォーカスした方が今語られる物語として響くものがありそうなのに、愛を中心にすることで「愛を求め、愛に生きた女性の悲劇」というフォーマットに囚われているような気がした。
 
あとラドゥーよ!!ファムファタールとしての彼女にあてられて狂っていく様子はわかるのだけど、ずっとストップ高であのテンションなのですごく疲れた…。せっかく戦争に心を痛めるナンバーがあるのだから、軍人として葛藤する姿は違うテンションで見たかったな。あいつ、結構無能じゃね?しかし歌声は本当に惚れ惚れしますね…万里生さんの声大好き。出てくると「こいつ気持ち悪いな…」と思い、歌い出すと「す、好き…!」となるので更に疲れた。
 
東啓介さんの歌声も素敵だったし、何よりシングルキャストの皆さんの歌声が素晴らしかった!衣裳替えがとにかく多くて大変だろうに全然ぶれないし、印象に残るシーンがたくさん。私のお気に入りはマタがベルリンへ向かうシーンのナンバーと視線!あんなの見てたらこっちまで冷や冷やしちゃうよ。
 
と、こんな感じで4本鑑賞しました。最近映画見るより舞台見てるなあ。しかしアウトプットが全くできていないので、アウトプットの練習しつつ下半期ももりもり観劇したいです。でも上半期、まだ行かないで…………。